自律型人材育成|株式会社マネジメントバイフィロソフィア

【抜粋版】日系企業がタイで人材育成や研修を行う際の留意点―経営者・講師のための実践ガイド―

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【MBP】世界のMJ通信

【自律型で、生きていく】

<2025.11.12号 Vol.037>

※毎週水曜日11時に発行

 

【抜粋版】日系企業がタイで人材育成や研修を行う際の留意点

―経営者・講師のための実践ガイド―

 

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自律型人材育成マネジメント

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■<1>MJの近況

■<2>【抜粋版】日系企業がタイで人材育成や研修を行う際の留意点

―経営者・講師のための実践ガイド―

■<3>編集後記&お知らせ

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■<1>MJの近況

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タイから帰国して10日ほど経ちました。

前回の記事にも書いたとおり、今回は

講師としてもコンサルタントとしても

HR系コンサルティング会社の経営者としても、

実に多くの学びと気づきを得ることができました。

 

今回は以下の内容の抜粋版についてお届けします。

 

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■<2>【抜粋版】日系企業がタイで人材育成や研修を行う際の留意点

―経営者・講師のための実践ガイド―

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本日のコラムの想定読者:

・タイや東南アジアの国の現地法人の

トップ、マネージャーとして赴任する日本人

・海外で研修講師として登壇する、

あるいはしたいと考えるプロ講師の方

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Ⅰ.はじめに:

 

「微笑みの国」の裏にある「現実主義」

日本ではタイを「微笑みの国」と呼ぶが、その笑顔の奥には深い社会的知恵と現実主義がある。温和で人懐っこい国民性の一方で、タイ人は非常にしたたかで、状況適応に長けた民族である。それは歴史的・宗教的・政治的背景に根ざした、したたかな“サバイバル文化”の産物でもある。

 

 

Ⅱ.タイの文化構造を理解する5つの鍵

1.微笑みは「感情」ではなく「社会的潤滑油」

タイ人の笑顔(ยิ้ม:イム)は「好意」だけでなく、「困惑」「謝罪」「拒否」「ごまかし」まで含む。笑顔とは「相手の面子を守り、場を穏便に収める」ための非言語的コミュニケーションである。したがって、表情の穏やかさを“同意”と誤解してはならない。

→笑顔の裏に「No」が潜んでいることを読み取れるかが、現地マネジメントの分水嶺

 

2.仏教的現実主義:サバーイ・サバーイの本質

上座部仏教に基づく「無常」「縁起」「中道」の思想が根づく社会では、“今この瞬間”に焦点を当て、流れに逆らわず柔軟に生きることが美徳とされる。「サバーイ・サバーイ(まあ気楽に)」という言葉に象徴されるように、無理せず、焦らず、調和的に生きる柔軟なリアリズムが根底にある。これは怠惰ではなく、“変化に飲み込まれない知恵”である。

 

3.王制と仏教が支えるヒエラルキー構造

タイ社会はヒエラルキー(上下関係)を明確に意識する社会である。

「プー・ヤイ(目上)」と「プー・ノーイ(目下)」という概念が日常の人間関係を規定する。このため、組織内での立場・年齢・役職によって発言や行動の自由度が大きく異なる。上司に直接意見することは「無礼」ではなく「不敬」と捉えられることもある。

→講師や上司は、“フラット”ではなく“リスペクトされる立場”を保つことが重要

 

4.外交的老練さ:外圧をかわす国家DNA

タイは東南アジアで唯一、西欧列強による直接的植民地支配を免れた国である。ラーマ5世の時代から続く「バランス外交」の知恵は現代にも受け継がれ、日本・中国・米国のいずれにも偏らずに国益を守るという戦略的中立性を誇る。

→一見「Yes」と言いながら、実は「様子見」をしている。交渉・合意形成の速度は慎重

※完全に圧力を受けなかったわけではなく、領土は割譲している

 

5.「柔らかく見えて、芯は鉄」

タイ人は穏やかだが、決して従順ではない。「笑顔の裏に戦略」「和やかさの裏に計算」がある。その根底にあるのは、「国として生き抜く」したたかさ。

“Smile outside, strategy inside.”
これがタイ社会を象徴するフレーズである。

 

Ⅲ.経済・雇用環境の現状

1.給与水準の変化

・若手一般職:月20,000〜25,000バーツ

・都市部中堅層:月40,000〜60,000バーツ

・管理職・専門職:月70,000〜100,000バーツ超

※バンコク都市圏、ホワイトカラー想定(営業職・管理職・専門職など)。地方では これより1〜2割低い

→月50,000バーツは「快適に暮らせる中堅層の目安」
→優秀層は複数の外資・日系・国内大手を比較し、報酬+働き方+キャリアで選択する

 

2.日系企業の相対的地位の低下

かつての「日本企業=高給・安定・安心」の時代は終わり、給与だけで人材を惹きつけられる時代ではなくなった。現在、日系企業は「給与面では外資に劣り、キャリア面では国内企業より硬直的」とみなされる傾向もある。優秀層は、“誰と働くか”よりも“どのように成長できるか”を見ている。

したがい、日系企業で働くことの魅力を再定義する必要がある。「丁寧さと信頼」だけでなく、「明快な評価・成長機会・グローバル経験」を提示すべきである。

前向きな意見としては、タイ人管理職の中には「日系のほうが、マネジメントが穏当で好き」「外資は成果が出ないとすぐ切るからいや」という人も一定数存在する。

 

Ⅳ.研修・人材育成における6つの実践留意点

1.「誰が言うか」が最重要

ヒエラルキー社会では、「講師の肩書・実績」が受講者の信頼形成に直結する。プロフィールには学歴・資格・国際経験・登壇実績・社長職などの“権威情報”を明示する。親しみやすさよりも「尊敬に値する存在」であることが前提。

→例:「日本企業の人材育成コンサルティング会社の社長であり、15年で7,000人以上のマネジメント層を育成してきた」という肩書は現地において非常に効果的 

 

2.「笑顔の裏の沈黙」を読み取る

タイ人は“対立回避”を最優先するため、「理解できた?」「OK?」と聞かれても笑顔で頷くことが多い。しかし、それは必ずしも「納得」や「同意」を意味しない。表情よりも、質問の有無・グループ内の沈黙・視線など非言語情報を観察する。

 

3.「心理的安全性」の前に「敬意」を確立する

日本式の“フラットな対話型研修”をいきなり行うと上下関係に敏感な参加者が萎縮する。まずは「講師・上司への敬意」を保ちつつ、徐々にフラットな場へ導く構成が望ましい。

→序盤は講義中心、徐々にグループワーク・発表へ移行

 

4.「個よりも集団」:グループ単位で考えさせる

タイでは個人発表よりも「グループディスカッション → 代表発表」が効果的。個人の主張は控えめでも、チームとしての成果には強い誇りを持つ。

→集団和を壊さずに“内発的議論”を促す仕掛けを

 

5.「Yes」を鵜呑みにしない

表面上はYesでも、実際には“場を収めるためのYes”であることが多い。理解・納得・行動意欲を分けて確認する質問設計が必要。

→例:「今理解できたことを自分の言葉で説明してみてください」

 

6.「日本的価値の押し付け」を避ける

“和を以て貴しとなす”や“みんなで一緒に考える”といった価値観をそのまま持ち込むと「曖昧で判断が遅い」と受け取られる。タイ人は明快・合理的・成果志向な説明を好む。

→結論を先に、理由を短く、感情を込めて伝える

※通訳/バイリンガルスタッフを挟む場合、彼らは“場を壊さない翻訳”をする傾向があるため、講師側のメッセージが自身の意図よりもマイルドに届くことがある。重要部分はゆっくり・短く・繰り返す必要がある

 

Ⅴ.キャリア開発支援における4つの示唆

1.「安定」より「成長」を語ること

給与・安定は前提条件。心に響くのは「あなたの市場価値を高める」というメッセージ。

 

2.「義務」より「意義」を提示すること

“会社のため”ではなく、“あなたの人生に意味を与える”研修テーマを設計する。

 

3.「上から目線」ではなく「尊敬される対等性」

タイではフラットよりも「格のある対話」が好まれる。権威を立てつつ、誠実に向き合う姿勢が信頼を生む。

 

4.「権限のライン(境界線)を明確にする」

タイ人は“上司がどこまで決裁できるか”に重きをおくため、赴任する日本人が権限を曖昧にするとかえって混乱が生じる。

 

 

Ⅵ.まとめ:

「フレンドリーな笑顔の向こうにある、鋼の現実主義」

タイ人は明るく、温かく、柔らかい。しかし、その笑顔の奥には「国家として、個人として生き抜く知恵」が息づいている。だからこそ、タイで人材育成を行う日本人は―

 

・“親しみ”よりも“尊敬”を先に築き、

・“和”よりも“意味”を語り、

・“理屈”よりも“誠実さ”で信頼を得ることが重要である。

 

柔らかく伝え、硬く芯を残す。

それが、タイで成功する日本人講師・経営者の姿である。

 

参考:現地で響く講師プロフィールの書き方例

Jun Mori, President of Management by Philosophia Co., Ltd., Japan.
Certified Management Consultant and Professional Assessor with over 15 years of experience. Conducted assessment and leadership training for over 7,000 business professionals across 100+ companies. Specialized in developing self-directed leaders and creating sustainable management culture in organizations.

 

※本資料はバンコク首都圏のホワイトカラー層を主たる想定対象としています。製造拠点・地方都市・家族経営のタイ企業では、ここで述べる傾向が弱く出る場合があります。

 

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■<3>編集後記&お知らせ

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今回の記事は、現地タイで

働く複数の日本人マネージャーや

トップの方にも事前にご覧いただき、

内容の信頼性は各位からお墨付きを

いただいているものとなります。

 

こちらは抜粋版ですが、完全版を別途、

PowerPointで作成しております。

 

ご希望の方に無償でPDFでお配りしておりますので、

欲しいという方は下記のお問い合わせフォームから

当社までご連絡いただければ、2営業日以内を目安に

お送りさせていただきます。

 

 

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