横浜、関内の夜。グラスに注がれた赤ワインの向こう側に、久保田和也氏がいました。
2017年、千葉のヴィパッサナー瞑想センターで出会った久保田和也氏が、いま世界を舞台に事業を動かしている。時間は、確かに流れている。
しかし、この場に流れていたのは、それだけではありませんでした。

ベトナム・ホーチミン発祥のピザレストランであり、いまや世界に約40店舗を展開する「4P’s(フォーピース)」を知っていますか?日本には港区の麻布台ヒルズに出店しており、予約困難な人気のレストランとして知られています。
2011年にベトナムから始まり、カンボジア、日本、インド、インドネシアへと広がり、従業員数は約4,000人。そして2026年の4月には、ニューヨーク進出を控えています。
その歩みは、単なる飲食店の多店舗展開ではありません。そこには「世界観」と「意味」を起点に事業を育ててきた、揺るがぬ「思想」があります。
その世界展開の役割を担っているのが、同社のグローバルブランドディレクター兼日本事業責任者の「久保田和也」氏です。
2026年4月、久保田氏がニューヨークに発つ直前にじっくりとお話をうかがいました。
久保田氏とは、最近知り合ったわけではありません。
今から遡ること2017年。わたしが千葉のヴィパッサナー瞑想センターで10日間の瞑想に参加したとき、そこで出会ったのが久保田氏でした。当時のわたしは、まだ今の事業を確立する前であり、組織人事コンサルタントとしての道を模索しながら、自らの内面と向き合っていた時期でした。
一方の久保田氏もまた、静かな瞑想の場に身を置いていました。
あれから時を経て、久保田氏は4P’sというブランドを通じて世界に新たな価値を広げ、わたしは「自律型人材育成マネジメント」を掲げて組織変革に取り組んでいます。
今回の再会は、わたしにとって単なる旧友との再会ではありませんでした。それは、「意味のある世界観」と「それを体現する事業」とは何かを、改めて問い直す機会でもありました。
目次:
■久保田和也氏経歴
■2017年久保田氏との出会い「ヴィパッサナー瞑想休暇」を認める企業
■久保田氏のような人が「この会社にいたい」と思える企業とは?
■自律型人材は、なるべくしてなるものなのか?採るものなのか?育てるものなのか?
■自律型人材は、組織を超えて共鳴し合う
■久保田氏との対話を振り返って
■「自律型人材」と「世界観」の循環
■Pizza 4P’sグローバルブランドディレクター:久保田和也氏略歴
大学で建築を学んだのち、アパレルや営業職を経て飲食業へ進む。シンガポールのイタリアンレストラン勤務ののち、東南アジアやヨーロッパを巡って各地のピザを食べ歩き、2016年にベトナムのPizza 4P’sへ参画。以後、店舗開発、新規事業、カンボジアでのゼロウェイスト店舗立ち上げ、日本・インド・インドネシアなど各国展開を牽引し、現在はGlobal Branding Directorとしてグローバル展開の中核を担っている。
▼”Earth to People” 同社のコンセプトがメニューブックにも刻まれている▼

■2017年久保田氏との出会い「ヴィパッサナー瞑想休暇」を認める企業
ヴィパッサナー瞑想とは、聞き慣れない言葉かもしれません。簡単に言うと、ブッダ(ゴータマ・シッダールタ)に由来する瞑想法を現代的に体系化したものです。1日10時間、10日間一言も話さず瞑想し、ひたすら自身の心と体に生じる変化を観察します。
日本には千葉と京都に瞑想センターがあります。
ある種、特異な環境と言えるかもしれません。久保田氏とわたしは、千葉のヴィパッサナー瞑想センターで出会いました。
正直に言うと、最初は意味が分かりませんでした。なぜ10日間も誰とも話さず、ただ座り続ける必要があるのか。時間の流れの遅さに、気が遠くなるような感覚すらありました。しかし、3日目を過ぎたあたりから、自分の中にある「ノイズ」が浮かび上がってきます。
過去。未来。欲望。不安。怒り。喜び。執着。そして幸せ。
それらが次々と現れては消えていく。そのとき、初めて理解しました。
人は、自分の「内側」を観ないかぎり、何も変わらない。
そして無事にヴィパッサナー瞑想の10日間の修行が終了。
当時、彼が住んでいた場所とわたしが住んでいた場所が近く、千葉の瞑想センターからの帰りの電車では、2人で色々と話しながらそれぞれ帰宅の途につきました。10日間の修行を終え、彼から聞いた言葉はこうです:
「僕はベトナムにある4P’s(フォーピース)というピザのレストランで働いています」
「今回はヴィパッサナー瞑想休暇で日本に来ました」
「うちは創業者が元バックパッカーでヴィパッサナー瞑想の経験もあって、ヴィパッサナー瞑想だったら休暇が認められているんです」
そんな会社があるのか、と正直驚きました。
彼自身の経歴もいわゆる「普通」ではありません。
大学で建築を学び、アパレルに行き、営業の仕事もし、その後、シンガポールの外資系レストランへ。その後、アジアの各都市を回り、ヨーロッパにわたり、本場のイタリア含めて世界中のピザ屋を回り、ベトナム・ホーチミンで立ち上がったばかりの店に行ったことがあった4P’sを再訪。もう一度4P’sを食べて、シンプルに、やはりおいしい。この会社は伸びる。そう思って、オーナーとのご縁もあり、入社することを決めたそうです。
そうした一連の経験を、彼は20代のうちに重ねてきました。
その話を聴いたとき、この人はずいぶん遠くまで、自分の足で歩いてきた人なのだと思いました。
■久保田和也氏のような人が「この会社にいたい」と思える企業とは?
久保田氏の発言には迷いがありません。だからこそ、聴いていて非常に心地よく、そしてストレートに心に届きます。
「うちの会社がすごいのは、僕みたいな人間が10年もいたいと思わせてくれることなんです」
「うちの会社の強みは、僕みたいな人間も会社にいることです」
「僕はもともとクリエイター気質で、自分で何かを創造したい人間なんです。僕の力を全部注ぐなら、この会社にいれば全部できるんです」
「オーナー夫妻もそうですし、僕もそうですが、資本主義が好きではない。でも、きれいごとだけでは世の中を変えることはできない」
「資本主義の中で、飲食において事業を成立させるなら、一番の指標は『一度来てくれたお客様が、また来てくれること』です」
「僕らの最上位概念がピース(Peace、平和・幸せ)で、それを具体にしたのがOneness(ワンネス、すべては一つ)そしてそれがEarth to peopleにつながっていきます」
「ワンネスとはスピリチュアルではなく、事実なんです」
「僕たちは今、事業を展開している国ですべての宗教に関わっている。食文化も違う。だから各国でメニューが異なります」
「お客様に影響を与える。お客様を変える、行動変容につながる。その個々の幸せがピースであり、ワンネス。そうした思想をもって事業をやっています」
久保田氏の話を聴いていて、わたしはショウペンハウエルの『思索』の一節を思い出しました。曰く、「ただ自分のいだく基本的思想にのみ真理と生命が宿る。」
創業者ご夫妻が執筆された書籍も購入し、拝読しました。
なるほど、久保田さんという自律型の人材は、出会うべくして4P’sと出会い、創業者ご夫妻の思想に惹かれ、そして共に何かを生み出す側になったのかと。
▼創業者ご夫妻が執筆された書籍▼
『PIZZA FOR PEACE 世界で愛されるピザレストラン Pizza 4P’sの軌跡』

多くの企業は、優秀な人材と、優秀な人材の能力を「囲い込もう」とします。
しかし本質はそこではない。「その人の人生」を拡張できるかどうか。
4P’sは、久保田和也という人間の可能性を制限しない。むしろ、それを「事業」として実装させている。久保田氏から「僕みたいな人間を10年もいたいと思わせてくれるうちの会社はすごい」という言葉を聴いて、かつて組織に身を置いていた頃の自分が、ふと重なりました。
■自律型人材は、なるべくしてなるものなのか?採るものなのか?育てるものなのか?
彼は、こんな話もしてくれました。
「インドはワンネスとダイバーシティ、インドネシアはワンネスと生物多様性」
「知っていますか?生物多様性という観点では、世界ではブラジルが1位、インドネシアが世界2位なんです」
「僕は世界各国でワンネスを体現している」
「自分はマネジメントには向いていないと思っている」
「今は仕事しかしていない、余裕がない」
「うちは360度評価を実施しているが、人事に関してはずっと手探りが続いている」
「国が違えば、マネジメントの難しさもまったく違う」
「制度に関して思うのは、その人の変化を記録する」
「その人が幸せになるために。それが制度の根幹にあるべき」
当社は企業向けに自律型人材育成と組織変革のサービスを提供していますが、自律型人材の育成というテーマが如何に難しいものであるのか、肌身で実感しています。
人へのアプローチと組織のあり方については、少なくとも切り分けるべきでしょう。組織側にできることは、従業員も顧客も含め、自社の思想に心から共鳴してもらえるような思想をいだき、それを商品やサービスや行動で体現し続けるほかにない、とわたしは考えます。
「余裕がない」
この言葉は、軽く発せられたものではありませんでした。
フロントランナーであり続けるということ、そして世界を広げるということは、同時に自分の余白を削っていくことでもあるのだとわたしは感じました。
■自律型人材は、組織を超えて共鳴し合う
今回、久保田氏との会食の場所は横浜にあるイタリアンレストランでした。久保田氏とわたしの再会の場にふさわしいと思ったからです。その場には、もう一人いました。
▼左から久保田氏、MBP代表森、ラメシ氏▼

ネパールから日本に来て、この店を立ち上げたラメシ氏。ラメシ氏もまた、自らの手で事業を築き上げてこられた方です。横浜の関内で2店舗、イタリアンバルAMIGOアミーゴという大人気のお店を経営しています。
ラメシ氏もまた、誰に言われたわけでもなく、与えられたわけでもなく、自分の人生を自分で切り拓いてきた人間です。
その場にいた3人に共通していたものがあるとするなら、それは「誰かに決められた人生を生きていない」ということだったのかもしれません。会社も違う。国籍も違う。歩んできた道も違う。それでも、話は自然と通じる。
実はこちらのアミーゴには、以前、知人の経営者の方に連れてきていただきました。料理の美味しさはもちろん、ラメシ氏が醸し出す空気感やお店の雰囲気がとても良く、その後も横浜近辺で大切な人と会う際には、積極的に伺うようになりました。
自律型人材は、組織を超えて共鳴し合うのです。
■久保田氏との対話を振り返って
わたしが久保田氏と出会ったのは2017年。当時のわたしは「会社から休みをもらってヴィパッサナー瞑想に来ました」という話を聴き、通常の企業であれば許可されるはずがないであろう取組みに、4P’sという企業がそれを認めることに驚嘆しました。ヴィパッサナー瞑想に行くということは、少なくとも次のような状態を意味します。
・10日間、完全に音信不通になる
・仕事は完全に止まる
・もちろん短期的な数字の成果も出ない
通常の企業であれば、なかなか認めにくいはずです。これは、4P’sが「人」を単なる労働力として見ていないことのあかしであると思ったのです。
一方、2026年の彼は「あのとき、ヴィパッサナー行けたのって会社が休みくれたからですが、今は難しいかもしれませんね。だってインドのスタッフがみんなヴィパッサナー瞑想に行きたいっていったらお店が回らなくなるので」
人も組織も、変わる。制度も、一度つくったとしても、その瞬間から古びていく。しかしその中で変わらないもの、変えてはいけないものがある。
4P’sにとっては、それがピースであり、ワンネスで世界をつなぐことなのだと思います。久保田氏はこれから再び、同社にとって前人未到のニューヨークで新しいお店を世界にひらきます。
4P’s、そして久保田氏の挑戦はこれからも続くのでしょう。
そこに、4P’sの原点となる『基本的思想』があるかぎり。
▼筆者がベトナムのダナンで食べた名物ブッラータチーズのピザ▼

■「自律型人材」と「世界観」の循環
自律型人材は、なるものか、採るものか、育てるものか。
この問いは、今回の対話の核心でした。彼は率直にこう言いました。
「自分みたいな人材、いないんですよ」
採れないし、育たない。
では、自律型人材とは何なのか。
わたしはこの問いに対して、一つの仮説を持っています。自律型人材は「なるもの」ではない。「世界観に共鳴するもの」である。
▼「4p’s」国ごとや店舗ごとに異なる世界観の設計▼

つまり、自律型人材とは、採るのでもなく、育てるのでもなく、世界観に引き寄せられる存在なのです。だからこそ、世界観が弱い組織には自律型人材は現れない。逆に、強い世界観には自然と人が集まるのではないでしょうか。
対話の中で、彼は何度もこう言っていました。
「ワンネスはスピリチュアルじゃない、事実なんですよ」
「地球から人、人から地球。全部つながっている」
「お客様の行動が変わる。それがワンネスであり、ピースにつながる」
この言葉を聞いたとき、わたしはあらためて確信しました。彼は理念を語っているのではなく、わたしたちが生きる「この世界の前提そのもの」を語っている、と。
だからこそ
・インドでは「多様性」
・インドネシアでは「生物多様性」
という形で表現が変わる。
これはマーケティングではなく、「ワンネスという思想に基づいた認識の変容」の設計です。4P’sは、ピザを売っているのではなく、人の「認識」を変えているのだと思いました。
さて、あなたは、あるいはあなたの組織は、どんな世界観を実現したいですか?
実現したい「何か」はありつつも、実際には多くの企業が
・理念があるが浸透していない
・人材育成が機能していない
・管理職が機能していない
・組織がバラバラで一体感がない
といった課題を抱え、「思想なき施策」を繰り返しています。
その原因は、突き詰めれば一つです。
そもそも「世界観が設計されていない」
人は、「意味」によってしか動かない。
「納得できる世界観」があって、初めて動く。
「自律型人材育成マネジメント」とは何でしょうか?わたしはこう考えます。
・なるものではない
・育てるものでもない
・採るものでもない
・共鳴するものである
強い世界観があるところにしか、現れない。逆に言うと、強い世界観があるところに、自然と発生し、集うのだと思います。
世界観が先か。人材が先か。答えはシンプルです。循環です。
世界観が人を育て、人が世界観を体現し、その現実が世界観をさらに強くする。
この循環が回り始めたとき、組織は『意味を生み出す存在』になります。
あなたの組織は、どんな世界観を実現したいですか。
そして、その世界観に共鳴する人はいますか。
もしこの記事を読んで「これは他人事ではない」と感じたのであれば、それは変革のタイミングかもしれません。多くの企業が抱える経営上の根本的な問題は、人材ではありません。「世界観の不在」です。
しかし、現実にはどうでしょうか。
多くの企業が「人が育たない」と言いながら、「人を変えること」ばかりに目を向けているように、わたしには思えるのです。
当社では、
・経営理念や世界観の言語化
・マネジメント人材の選抜や育成
・自律型人材を輩出する仕組みの設計
・組織文化の変革
を一気通貫で支援しています。
人は、『意味』でしか動きません。
あなたの組織は、
どんな世界観を実現したいですか?
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