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【MBP】世界のMJ通信【自律型で、生きていく】
<2025.4.23号 Vol.008>
【読書感想】人材育成従事者の観点から読む【オットー・ラスキー著「人の器」を測るとはどういうことか~成人発達理論における実践的測定手法~】
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■<1>MJの近況
■<2>人材育成従事者の観点から読む【オットー・ラスキー著「人の器」を測るとはどういうことか~成人発達理論における実践的測定手法~】
■<3>編集後記&お知らせ
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■<1>MJの近況
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引き続き、必要なタスク以外
全精力を書籍執筆に投入中。
今回は、その副産物として生まれた
以下のテーマをお届けします。
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■<2>人材育成従事者の観点から読む
【オットー・ラスキー著「人の器」を測るとはどういうことか~成人発達理論における実践的測定手法~】
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本日のコラムの想定読者:
【人材育成従事者】
・すでに対人支援を生業とし、理論的裏づけを求めている中級〜上級の方
・「人が変わるとはどういうことか?」に強い関心を持ち、構造的変容の見立てと支援スキルを磨きたい方
・自身のリミッターを超え、支援者としての倫理と器の拡張を欲している探究者
【企業経営者・CHRO】
・人材開発や組織開発を戦略課題と捉えている中堅~大手企業の意思決定者層
・「次世代育成が進まない」、「理念と行動が乖離している」などに悩むCHRO
・外部支援者との共創において、理論と現場の接続性に関心がある層
書籍執筆および当方(世界のMJ)の専門領域の観点に基づき、以下の書籍を購入。
オットー・ラスキー著『「人の器」を測るとはどういうことか―成人発達理論における実践的測定手法』
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まだ精読段階ではないが、当方の
専門領域である以下4つの職種において
・人材育成コンサルタント
・コーチ(とくに1on1支援者)
・アセッサー(観察型評価者)
・組織開発ファシリテータ
はどのように本書の知恵を活用すべきか、
あるいは携えるべき倫理観について
当方の所見を述べます。
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【1】本書の中核的知見:成人発達理論 × 主体-客体構造
■核心概念と内容
・成人発達理論(Constructive Developmental Theory):人間の「意味づけの仕方(meaning-making)」は発達的に段階構造を持つ。年齢に関係なく、個人の意識構造は発達する
・主体-客体構造:「自分であると同一化している構造(主体)」を対象化できたとき、それは「客体」になり、新しい発達段階に移行する
・測定手法:インタビューを通じて、個人がどのようなものを“当たり前”としているかを探り、段階を推定する(例:SCTI-Aなど)
・支援の目的:個人の発達段階を判断し、それに応じた問い・環境・介入を設計し、意味生成構造の自己対象化と変容を支援すること
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【2】職種別:活用法と実践アプローチ
■人材育成コンサルタントにおける活用法と実践ポイント
・育成計画を「能力開発」から「意味づけ構造の発達」にシフト→評価指標に“段階適合性”を取り入れる(例:発達段階3と5では育成課題が異なる)
・組織内の人材を、行動特性ではなく“世界の見え方”で分類・支援する→例:若手〜管理職〜経営層で異なる認知構造を可視化し、層別育成を設計してみる
・育成成果の再定義:「できるようになったか」ではなく「世界がどう変わって見えているか」ポテンシャルの指標を“見える化”できる内省フレームを支援に活用
■コーチ(とくに1on1支援)における活用法と実践ポイント
・セッションの焦点を「目標達成」から「自己理解と構造の可視化」に拡張→例:「どう考えてきたか」→「その前提をどこから来たと感じているか?」
・クライアントの“今の認識枠組”を言語化し、それを対象化できるよう支援→対象化とは「自分が何を“当たり前”としていたのか」に気づくこと
・「変える」ではなく「“見る”ことで変化が始まる」姿勢を保持→提案よりも、「問いの質とタイミング」が決定的に重要
■アセッサー(観察型評価者)における活用法と実践ポイント
・行動の背景にある“意味づけ構造”を観察対象とする→例:「なぜそのように判断したか?」から、価値軸の構造を推定
・行動評価を単なる“強み・弱み”としてだけではなく、“構造の映し”として扱う→評価観点を「何を見ているか」から「何に意味づけて動いているか」に転換
・フィードバックは「ズレの指摘」ではなく、「構造への問い」として行う→例:「これはあなたにとって“当然”に見えていたようですね」など
■組織開発ファシリテータにおける活用法と実践ポイント
・組織文化を「言動」ではなく「意味づけ構造の集合体」として分析する→例:同じ施策への反応が異なるのは、前提構造の違いによるもの
・対話の設計は“共通言語の整備”よりも、“構造間の翻訳”を目的とする→異なる発達段階間の通訳的ファシリテーション(例:発達段階3と5では世界の見え方が違う)
・「変革」ではなく「発達」が目的であることを意識的に保持する→組織変化を“構造の再編成”とみなして、急進的でなく漸進的プロセスを設計
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【3】人材育成従事者、すなわち対人支援のプロフェッションに求められる倫理観
■段階を優劣と混同しない
・すべての構造にはその段階の機能と美点がある
・「高段階=優れている」ではなく、「適応構造が異なるだけ」という視点を持つ
■変化を“起こす”のではなく、“生まれる”ことを支援する
・構造変容は外部から強制されるべきものではなく、内的発酵として起きるもの
・支援者は、「場をつくる」よりも「起きる場づくりに徹する」ことを目指し続ける
■測定は“固定化”ではなく“可能性の可視化”
・測定結果を「型にはめる」ためでなく、「成長の余白を発見する」ために使う
・結果の説明には慎重さと、発達の可逆性への理解が必要
■支援者自身の構造を対象化し続ける
・支援とは常に自己との相互照射。自分の問いの構造や価値前提を“見る”力が必要
・支援者の発達こそが、支援の限界を定める
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【4】対人支援のプロフェッションが携えるべき視座
本書は、支援の“目的”を「行動の変化」から「構造の成長」に更新する力を持つと思料。すべからく対人支援のプロフェッションは本書を通じて、
■クライアントの“意味づけ”という無意識構造を見抜き
■それを可視化・対象化できるよう支援し
■強制することなく発酵的に構造変容を支える
という高度な認識実践者であり続けることが求められる。
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【5】そして、その先へ
本書は、発達段階5に至るまでの理論および過程ならびに継続実践の手引書という観点において、きわめて精緻に組み立てられた稀有な書と感じました。
一方、発達段階5を超えた人々(おそらく人類全体レベルで僅少)に関しては、スザンヌ・クック=グロイターやウィルバーの説明が一部記載されているのみなので、本書のオビにある「理論と対人支援の実践をつなぐ」という観点においては、そこはまだこれからの領域なのだと感じました。もちろんわたし自身の実践もまだまだです。
加えて、発達段階5の意識構造を持つ人(あるいは人々)を支援するアクションの実践を、その対人支援者に求めるということは、その対人支援者は発達段階6以上に達している必要があります。したがい、本来的にはその人たちに対する「ある種のケア」も必要と感じます。
発達段階6以上の人々は
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■現実世界との接点喪失
■深い実存的孤独
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という影が生じるはずなので。
そこまでいくと現在の成人発達理論、あるいは成人発達理論という単一理論の文脈のみでは語り切れないと思いますし、
ビジネスシーンにおける対人支援プロフェッションの現実的なアプローチとしては、やはり発達段階3から発達段階4へのオーガニックな移行の支援、というのが日本社会や日本企業の文脈においては今の段階では適しているのだと思います。
そして人の意識構造に言及する以上、携わる支援者あるいは団体の倫理や倫理観が、絶対に必須であると考えます。これは絶対に譲ってはいけません。
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【6】本コラムのさいごに:
すべての「理論」や「実践」は、いきとしいけるものがしあわせになるためにある
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■<3>編集後記&お知らせ
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組織人事領域、HR領域のテーマにどっぷり浸かったテーマをお届けしました。
今後はコラムの内容により、想定読者層をおつけするのがよいかなーと思いました。
当方のコラムのテーマはあっちに行ったりこっちに行ったりする可能性があるので
今回のコラムのテーマで語り合える方、あるいは語り合いたい!という方はぜひ当社にご連絡ください。
本当にそうした方がいらっしゃいましたら、当方はぜひそのご連絡をお待ちしております。
【ご意見・ご感想・お問合せ】
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